Who is the worst guy?ーlost talesー

時系列はWho is....の後ですが、

基本的にディーンの昔話になっております。コチラ単体でも楽しめるようには書いておりますがWho is....の要素もあります

前回と違い恋愛要素もあります。直接的では無いので、年齢制限は設けませんが性描写を示唆するシーンもございますので一応お気をつけ下さい。


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ディーンスナイパーであるが、とあるマフィアに雇われている。


アンナ売春婦。


ファウストマフィアの大幹部。


情報屋謎に包まれている全てを知っている人物



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ディーン 

ファウスト 

アンナ 

情報屋 

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ディーンM 仕方ないとはいえ、仲間を....相棒を失った。「失う」....そんな事は仕事上、嫌でも慣れた筈だが、何故か思い出す。とうに忘れ去った、そんな程度の記憶だったはずだ。だが....俺が若い時の記憶がフラッシュバックの様に脳裏に過ぎった。』




ディーン「クソっ....バーストか....



情報屋「なんだ?調子が悪いなディーン」



ディーン「気にするな、酒の飲み過ぎさ」



情報屋「....エリックの奴らは良くやってるよ、荒削りだが、どこぞのCIAより腕が立つ」



ディーン「....そうか」



情報屋「....安心かい?」



ディーン「ああ。....ふぅ」



情報屋「さては、感傷に浸ってんのか?」



ディーン「....ハハッ....昔話は得意じゃねぇんだが....でけえ独り言だと思って聞き流してくれ」



情報屋「ああ。わかったよ」



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ディーンM 当時、俺はマフィアに雇われたただの用心棒だった。いわゆる兵隊ってやつだ。ああ、懐かしい。身なりのいいホワイトカラーに指示を受けて殺しの仕事をしてた。生きるために殺す。実に殺伐とした世界だ。


ある時、奴に1つの仕事を持ち込まれた。』




ファウスト「パイソン、いるか」



ディーン「んだよ、仕事か?」



ファウスト「当たり前だ。顔貸せ」



ディーン「チッ....早く言いやがれ」



ドン



ファウスト(脅すように)口を慎めディーン?情でここに置いてる訳じゃないんだ。組織ってもんを理解しろ」



ディーン「(少し苦しそうに)ッハ!ホワイトカラーのファウストさんよぉ、俺が居なきゃ片付かなかったヤマを数えてみな」



ファウスト「ほざけ。俺達ルチアーノファミリーが居なけりゃお前はとうに死んでる。それに...スラムの始末はしくじったみてぇじゃねぇか。俺は『殲滅』を命令したはずだ。ネズミ1匹残すなと、な」



ディーン「知らないね。」



ファウスト「チッ....まあいい。お前にこなしてもらう仕事は、これだ」



ディーン「は?....売春....宿?」



ファウスト「今回は殺しじゃない。ここに居る売春婦のうち、何人かイタリア国籍の女がいる」



ディーン「人身売買....か?」



ファウスト「そうだ。俺達の祖国に喧嘩を売るやつが居てな。」



ディーン「そうか。で?俺の仕事は?」



ファウスト「イタリア国籍の女を保護しろ」



ディーン「保護!?俺に出来るのは殺しだけだ!」



ファウスト「お前はもっと世界を見るべきだ。ヒットマンなら尚更さ。これは命令だ。わかってるな?」



ディーン「....チッ。わかったよ」






ーーーーーーーーーー


ディーンM『ベルモンド・ファウスト。イタリア系マフィアの首領、こいつが俺に殺し以外の仕事を命令を下したのは初めてだった。

当時の俺はまだまだ青くて、雇い主に唾を吐き捨てたりしていた。この仕事も、納得いかなかった。....が、生きる為、仕方が無いと飲み込んで命令を受けたのさ。おぼつかない足でBARに向かった。』




ディーン「保護....なぁ。」




ディーンM そのBARは件(くだん)の売春宿の近くにあった。この時の俺アルコールを喉に流し込みたくて仕方がなかったんだ。いわゆるヤケだ。そうしている間にも客引きの女が声を掛けてきたりして「No」の一点張りだったが、一際目を惹く女が目の前に現れた』



アンナ「あら、お兄さん一人?」



ディーン「...ナンパや客引きはお断りだ」



アンナ「さっきからずっと見てたから知ってるわ。私は一緒に飲みたいだけ。それもダメかしら?」



ディーン「....好きにしろ」



アンナ「ありがと。マスター、マティーニを」



ディーンM そうして隣に座ってきた女は、金髪碧眼の美女だった。さっきまでの客引きの女と違って下品さも感じられなかった。「美女には気をつけろ」と今の俺ならそう思っただろうが、当時の俺にはそんな頭はなかった』



アンナ「なんてお呼びしたらいいのかしら?」



ディーン「....ディーンだ」



アンナ「ディーン....私はアンナよ」



ディーン「呼ぶ機会は無いだろうがな」



アンナ「それでもいいわ。お兄さん....いえ、ディーンの記憶の隅っこにでも


居れるなら」



ディーン「....酔ってんのか?」



アンナ「当たり前じゃない、飲んでるんだもの」



ディーン「新手の客引きか?あ?」



アンナ「客引きもとうに済ませて仕事も終わったの。だからオフよ。失礼ね」



ディーン「...そうかよ」



アンナ「貴方は?見かけない顔だけど」



ディーン「通りかかってこの酒場を見つけた。それじゃダメか?」



アンナ「....ここに新顔が来るのはワケあり位しか居ないわ....。でも....そういうことにしといてあげる。」



ディーン「ハッ。ありがたいね。」



アンナ「でもね....貴方、何か思い詰めてない?」



ディーン「ほっとけ。仕事が上手くいかねぇだけだ。」



アンナ「理由がなんだろうと、ちょっと見過ごせないわ....ディーン、貴方のそのお酒の飲み方....見るとこっちまで辛くなる」



ディーン「だからほっとけって。お前には関係ない。」



アンナ「...確かに関係ないわ。私はお酒を飲んでるだけ。貴方は大きな独り言を言う。それならいいじゃないかしら?」



ディーン「...腐りに腐った糞袋のような世界に嫌気が差しただけさ」



アンナ「....



ディーン「殺さないと殺される。そんな世界で生きてんだ、俺は」



アンナ「....



ディーン「殺せば殺すほど憎しみの連鎖にまみれてよ...だが生きて行くためには容赦なく殺したさ....なのに....





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情報屋「ハッ!お前が知らねぇ女に身の上話をするとはなぁ!」



ディーン「るっせえ!!俺だって若い時はあるんだよ!!」



情報屋「いいねぇ!青いねぇ!」



ディーン「だから茶化すなって」



情報屋「すまんすまん、あまりにもお前さんらしくなくて、ついな」



ディーン「確かに、この時の俺はどっかおかしかったのかねぇ」



情報屋「銃声で頭がやられたか?」



ディーン「間違いねぇ」



情報屋「もう一杯どうだ、たまにはもっと付き合えよディーン?」



ディーン「あぁ、もらおう」




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ディーンM『アンナと名乗った女は、話に割り込むでもなく、静かに頷き、静かに聞いていた。そして、俺のヤケにも近い愚痴を聴き終わったあと、口を開く。』




アンナ「そう、貴方はそうやって殺し屋になったのね...生きるために殺す...私には考えられないわ」



ディーン「だろうな。」



アンナ「貴方....辛いんでしょう。」



ディーン「誰も言ってねぇよそんなこたァ」



アンナ「小さな子を逃した...殺し屋にしては優しすぎるわよ。」



ディーン「...。」



アンナ「私はその界隈はよく知らないわ。だけど、本来殺し屋なんてもっと冷酷だと思うのよ。」



ディーン「冷酷なんてもんじゃねぇ。人の感情を持ってねぇ生き物だ」



アンナ「でしょうね。」



ディーン「それに俺は優しいんじゃねぇ。俺が生半可なだけだ。」



アンナ「その生半可な気持ちが、今その子を生かしてるのよ。少なくとも、


その子の命は助かったわ」



ディーン「...。」



アンナ「命さえあれば、何だって出来るのよ?」



ディーン「だが、俺はガキ以外は全員殺した」



アンナ「そうね。」



ディーン「そいつがいつか俺を殺しに来るかもわからねぇ。ホントあまちゃんだよ俺は。」



アンナ「その時が来たらどうするの?」



ディーン「簡単には殺されてやらねぇよ。」



アンナ「やっぱり優しいのね」



ディーン「うるせぇな。」



アンナ「普通なら「殺す」って言うんじゃないの?」



ディーン「....チッ。調子が狂う。俺はもう出る。じゃあな。」



アンナ「待って、ディーン」



ディーン「...今度はなんだ」



アンナ「そんなヤケクソな状態で何処に行くの?」



ディーン「飲む場所を変えるだけだ。お前には関係ない」



アンナ「じゃあ...私の家はどうかしら?」



ディーン「断る」



アンナ「お酒もある程度揃ってるわ。それに...



ディーン「なんだ」



アンナ「....(ため息)負けたわ。私は貴方を魅力的に感じてる。」



ディーン「ハッ。冗談言うな」



アンナ「回りくどい言い方は好きじゃないと思うからハッキリ言うわ。一日だけでもいい、私に夢を見せてくれないかしら?」



ディーン「...



アンナ「お願いよこんな恥ずかしいこと言わせないで」



ディーン「...まずは酒からだ。その後は後で決める。いいな?」



アンナ「ふふっ、ありがとう。喜んで」







(ロックグラスに氷。目の前には高価そうな酒が並んでいる)




アンナ「何飲む?これも飲んでいいのよ」



ディーン「....ナポレオン...しかもXOじゃねえか....!!



アンナ「お酒を集めるのが好きでね。ヤケになった時や、感傷に浸りたい時にお世話になっているわ」



ディーン「ヤケ酒で飲むもんじゃねぇだろこれ...



アンナ「ふふっ。さて、何飲む?言ってくれたら出してくるわ」



ディーン「...フォアローゼス。ワイルドターキーでも構わねぇ。」



アンナ「あら、そんなのでいいの?もっといい物出せるわよ?」



ディーン「俺の舌にはこれが一番だ」



アンナ「勿体ないわねぇ」



ディーン「どんな上品で高価な酒を飲もうが、結局はこれが落ち着くんだよ」



アンナ「...オールド・リップ・ヴァンウィンクル。」



ディーン「気に入らねぇ。箱入り娘だあんなもん。」



アンナ「ダブル・イーグル・ベリーレアもあるわよ」



ディーン「ありゃダメだ、高飛車で気がキツイ。俺には合わねえ。」




アンナ「...私は好きよ、そのセンス。じゃあ待ってて。」




(瓶を開け、注ぐ音、氷の音が響く)



アンナ「貴方は、お酒を女として扱うのね。」



ディーン「あぁ。女と一緒さ。それぐらい好みやレベルで味も違う。どんな味でも付き合いが長くなると愛しくなるもんだ」



アンナ「じゃあ、私は何に当てはまるのかしら」



ディーン「しょうもねえ質問するんじゃねぇ。だが、強いて言うならI.W.ハーパーか」




アンナ「ふふっ、ちなみに聞くけど、なんでかしら?」




ディーン「ボトルがヤケに綺麗で品がある。の割に味に芯の強さがあるんだ。見た目や振る舞いにだけじゃねえ。さらに味わいたくなる。たまにはそんな刺激があってもいい」




アンナ「それは、口説いてるってことでOKかしら?」



ディーン「フッ。どうだろうな。」



アンナ「わたしはフォアローゼス。あなたはハーパーを飲みましょう?」



ディーン「悪かねぇな」




(グラスにそそぐ音)



(アンナ、フォアローゼスを1口飲む)



アンナ「....たしかに、フォアローゼスなんて安酒過ぎて長年忘れてたけどこんな味もいいかもしれないわね。....おいしい」



ディーン「....そうか。ハーパーは深みがあって嫌いじゃねぇ。」



アンナ「そうねこれが、あなたが感じた私の味よ」



ディーン「悪かねぇな....寧ろ...癖になりそうだ(軽くキスをする)





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情報屋「ほぅ?お前にしちゃ珍しいじゃねえか。初対面の女相手に口説き文句なんざ」



ディーン「俺だって女に甘い言葉はかけるさ」



情報屋「そうじゃねぇ。わざわざお前の好きな酒に例えるなんざ...ハーパーねぇ。」



ディーン「あ?」



情報屋「そういえばお前、俺と飲む酒は必ずハーパーだなぁ?」



ディーン「...るっせえ」



情報屋「『癖になりそうだ』ってか?」



ディーン「....それ以上言ってみろ。お前のディックが蜂の巣になるぜ」



情報屋「いやぁすまんすまん、お前から浮いた話が聞けると思わなくてな」



ディーン「だから、若かったんだよ」



情報屋「可愛い時期があったもんだ。で?女とのベッド事情を早く聞かせてくれよ?」



ディーン「ったく好き者が....






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アンナ「はぁ...はぁ...



(ジッポの音)



ディーン「(煙草をふかし)...変わった女だよお前は。」



アンナ「...どうだったかしら、私の味は?I.Wハーパーと遜色なかった?」



ディーン「...最高さ。もっと味わいたい程にな」



アンナ「ふふふ。嬉しいわ」



ディーン「...



アンナ「やっぱり、あなたは優しいわ。殺し屋なんて務まらないほどにね。」



ディーン「あ?」



アンナ「荒々しい抱き方をするかと思ったら...恋人のように大切に扱ってくれるんだもの。勘違いしてしまいそうだわ...愛されてるって」



ディーン「そいつはいけねぇ。なんたって今日出会ったばかりじゃねぇか」



アンナ「あら、恋愛はきっかけさえあれば一瞬でも成り立つものなのよ」



ディーン「知らねぇな。無縁だ」



アンナ「ふふふ。これは私の電話番号。会いたいと思った時でいい、そうじゃなくても...、思い出した時にでも声だけでも聞かせて?」



ディーン「考えといてやるよ」





ディーンM『女を抱くなんざ、俺の中では作業でしかない事だった。この時は自分でもおかしいと思ったよ。連絡先を受け取った時点で入れ込んでたのかもな。それから数日、仕事をブン投げてアンナと恋人ごっこをしていくうちに、ガキくせえ恋をしてしまったのさ。そして...久々にモーテルに戻った。』








(モーテルの部屋のドアの音)



ファウスト「進捗がないようだが?」



ディーン「なんでお前がここにいる?」



ファウスト「お前がチンタラしてるのが悪いんじゃないのか?マフィアが犬の居所を特定するのは当たり前だ」



ディーン「そうじゃねぇ。何しに来た」



ファウスト「本来ならもう保護してる頃合だ。だがお前は手ぶら。お前こそ何してた」



ディーン「うるせぇな。呑んでただけだ」



ファウスト「仕事中に女に現を抜かすのはやめておけ。それにあの女は危険だ」



ディーン「は?見てたのかよ?趣味わりぃ」



ファウスト「忠告してやっているんだ馬鹿野郎。」



ディーン「誰抱こうが俺の勝手だろうよ。」



(銃の安全装置を外す音)



ファウスト「黙れ。あの女はFBIだ。」



ディーン「....っ!?」



ファウスト「わかるな?FBI…即ち俺たちの敵だ。」



ディーン「なんだと....



ファウスト「信じるか信じないかは自由だ。ただ、あの女を信じてヘマして俺に殺されるか、俺を信じて仕事をこなし金を稼ぐか。決めるのはお前だ」



ディーン「ふざけんなそんな訳



ファウスト「いいんだぜ俺は?お前がどうしようが。ただ簡単に女なんか信用するタマじゃない、そう信じてるさ」



ディーン「。」



ファウスト「まあいい。俺は忙しいんでな。お前と違って女を抱く時間なんてない」



ディーン「嫌味をどうも有難う。」



ファウスト「黙れ。じゃあな」




(ドアの音。ファウスト退出)




ディーン「じゃあ分かっててこっちに近付いた...って事か...チッ」






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アンナ「はい。アンナよ。」




ファウスト「やあ。アンナ・デイビス。」



アンナ「...



ファウスト「言い直そう。麻薬捜査官のアンナ・デイビスだな?」



アンナ「...私はただの女よ。」



ファウスト「嘘をつけ。お前が嗅ぎ回っているのはこちらは把握済みだ。」



アンナ「...。なんの用かしら」



ファウスト「そうだな、手早く行こうか。デイビス、いくら欲しい?」



アンナ「なんのつもりかしら?」



ファウスト「賢いデイビス捜査官ならみなまで言う必要は無い、分かるだろう?」



アンナ「...手を退けという事かしら」



ファウスト「ご名答。」



アンナ「さすがイタリアンマフィアね。インテリジェンスに解決しようってわけね」



ファウスト「よく分かっているじゃないか。聡明な女だ。」



アンナ「馬鹿ね。嫌味よ。」



ファウスト...。俺の気分が変わらない内に欲しい金額を言うんだ。金はいくらでもやろう。但し、応じないのであれば...



アンナ「殺すのかしら?生憎、私に脅しは通用しないわ。お金も結構。」



ファウスト「そんなに死にたいのか」



アンナ「いいえ?あなた達が狙っているものは世界を滅ぼすわ。そうなる前に私達DEAが取り締まる。それだけよ。」



ファウスト「おー怖い怖い。」



アンナ「正義を振りかざすつもりは無いわ。だけど...“クロコダイルはもはや薬物ではない。ただの猛毒よ」



ファウスト「ふっ。お前たちにとってはな。だが、俺たちにとっては「金の成る木」だ。」



アンナ「どうとでも言うといいわ。」



ファウスト「御託はもういい。応じないと言うのであれば消す。それだけだ。墓石に挨拶は済ませたか?」



アンナ「...私は屈しない」



ファウスト「諦めが悪いなぁ?まあいい。死を待つ事だな」



電話が切れる






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情報屋「案の定女にはめられるたァ、ほんとにこの時代、ポンコツだったんだな?お前」



ディーン「この家業は現地で学んでくもんだ。スーパーマンじゃあるめぇし」



情報屋「しかし、何処ぞの馬の骨のためにあのFBIがわざわざ近づくかねえ??それに仕事は売春婦の保護だろう?なにか引っかかる。」



ディーン「まあな。」



情報屋「きな臭くなってきたな。俺は好きだぜ?こういう話。ハリウッドでもあるだろう?」



ディーン「はっ!ハリウッドってのはもっと嘘くせえよ。」



情報屋「違いねぇ!」









ディーンM『その1日後に俺はアンナを呼び出した。FBIだろうが何だろうが、ただ会いたかった。そんなの嘘だと否定して欲しくてな。』





アンナ「会いたかったわ!ディーン!」



ディーン「あぁ」



アンナ「ふふっ。こんなに一緒に過ごせるなんて...自惚れてもいいのかしら?」



ディーン「構わねぇさ。俺も似たようなもんだ」



アンナ「嬉しいわ」



ディーン「俺もさ。女なんてめんどくさいと思ってたが、お前は違う。ほんとに最高さ」



アンナ「ありがとう、ディーン」



ディーン「このまま...バックレちまいてえ」



アンナ「? 仕事からってこと?」



ディーン「...ああ」



アンナ「どうしたの?顔色が悪いわ...



ディーン「聞きたいことがある。違うならハッキリ否定してくれ。」



アンナ「え、ええ...。」



ディーン「アンナ...俺にわざと近付いて利用しようとしたのか?」



アンナ「!?」



ディーン「答えてくれ」



アンナ「...。」


ディーン「お前はFBIで、俺を捕まえるつもりで近付いたのか」



アンナ「...ディーン...



ディーン「頼むから...否定してくれ」



アンナ「...ディーン、ごめんなさい...



ディーン「頼むから...



アンナ「あなたを貶めたいわけじゃなかったの...



ディーン「否定...してくれよ...



アンナ「...私は貴方を騙したわ...ごめんなさい」



ディーン「最初から、騙すつもりだったんだな」



アンナ「...



ディーン「...いいさ、あってまだ間もない。俺が馬鹿だったさ。」



アンナ「...ごめんなさい」



ディーン「...あなたを魅力に感じてるなんてよく言ったもんだ。早く消えろ。俺の気が変わらねぇうちに。でないと殺しちまう」



アンナ「...貴方に殺されるなら本望だわ。だから...(深呼吸)本当の事を話させて」



ディーン「...



アンナ「...まず、私は貴方を捕まえるつもりはないわ」



ディーン「はっ!よく言うぜ」



アンナ「本当よ。私はFBI捜査官なんかじゃない。DEA。麻薬捜査官。」



ディーン「は?」



アンナ「あなたの雇い主はそう伝えたようだけど。私は貴方ではなく、貴方のバックに居る雇い主を逮捕したい。管轄外なのよ。少なくとも今はね。」



ディーン「だが、今回のヤマは女共の保護で...ヤクに関係がない」



アンナ「大ありよ。貴方が行くべき売春宿。マフィアが唯の大義名分で娼婦を逃がすわけがないじゃない。」



ディーン「は...?



アンナ「...クロコダイル」



ディーン「それは...スラムの...



アンナ「ええ。貴方が潰した、製造元のスラムの街。捜査した所、貯蔵していたクロコダイルが跡形もなくなっていたの。殺された死体と、貯蔵分を運搬した足跡や引き摺った形跡と。時期がかなり違うのよ。」



ディーン「...俺は確かに殺しただけだ」



アンナ「でしょうね。容易に推測できるわ。きっとルチアーノ本家でしょうね。」



ディーン「...



アンナ「ルチアーノは今大量のクロコダイルを所持している。そして...今回の件で娼婦の保護の名目で女や元締めを追い出し、そこに自身のクロコダイルの製造工場と保管庫を作り出そうとしているのよ。」



ディーン「何だって...!?



アンナ「その元締めが元々、クロコダイルの製造を牛耳って私腹を肥やしていたようね。資料にはそう記述されている。邪魔だから消して全て頂こうって事かしら」



ディーン「汚ぇことしやがる...



アンナ「さしずめ貴方は端役だったんでしょうね。聞かされなくて当然よ...あくまでも推測だけど...あのファミリーはクロコダイルの市場を独占しようとしているのね」



ディーン「...マフィアがヤクを取り仕切ってるのは当たり前じゃないか?」



アンナ「ディーン...クロコダイルはマリファナやコカインとわけが違うわ...



ディーン「どう違うんだ?」



アンナ「服用すると...マリファナと同じように一時の快感を得るわ。ただ、本当にタチが悪くて、ただの1回の服用で依存症になるの」



ディーン「1回!?」



アンナ「それに。服用した者は寿命は最長で2年よ」



ディーン「...それは...もう猛毒じゃねぇか」



アンナ「ええ。身体中が壊死するんだから。...それに、作成コストは段違いに低い。容易に作れるの。だからアイツらの目論見が実現されると...



ディーン「どこぞで見たアウトブレイクが起こる...



アンナ「そうよ。だから、絶対に阻止しなければいけないの...



ディーン「俺は被害には興味ねぇ。だが...ちょうどファウストの土手っ腹に風穴を開けたい所だ。」



アンナ「...ディーン...



ディーン「アンナ。俺は仕事に行く。女共を逃がした後。ルチアーノのアジトにその足で向かう」



アンナ「私も行くわ」



ディーン「駄目だ。」



アンナ「だって...1人じゃ...それとも、私が足でまといなの?」



ディーン「そうじゃねえ」



アンナ「なによ...私の任務なの!貴方1人でそんなことをする必要がどこにあるの」



ディーン「...惚れた弱みだ。俺は殺し屋で守ることは出来ねぇ。だからせめて安全なところにいてくれ」



アンナ「...ディーン...



ディーン「相手は三大マフィアの一角だぞ。お前を舐めてるわけじゃねぇ。ただ単に危険過ぎる。」



アンナ「...分かったわよ...根負けしたわ」



ディーン「じゃあ、行ってくるぜ、Darling?」



アンナ「行ってらっしゃい、honey









情報屋「なるほど、DEAだったのか。厄介な女だ。俺にとっちゃ天敵だな」



ディーン「間違いねぇ。」



情報屋「で?女の訴えをすんなり信じちまったのか?」



ディーン「あぁ。後に話すが、結局それは本当だったさ」



情報屋「一晩で落ちた恋さえ、こんなにも人間を腑抜けにするんだ。恋愛ってのはつくづくわかんねぇなぁ」



ディーン「仕事にゃ邪魔だがな」



情報屋「で、速攻売春宿に向かったのか?」



ディーン「あぁ。」








ディーンM『おれはアンナと別れた後、しばらくしてから命令通り売春の元締めや必要以上にいるボディーガードを殺して女たちを解放した。簡単なもんさ。んでもって元締のいた部屋に隠し扉があり、開くと地下に続く通路が見えた』




ディーン「ここか。保管庫は」



ディーンM『地下に降りた先は、だだっ広い空間があった。得体の知れない機械が沢山あり、得体の知れない匂いが充満していて吐き気がした』




ディーン「...後でぶち壊してやるから、せいぜい動いてな」




ディーンM『そう吐き捨ててルチアーノのアジトに向かい、仕事の報告と傘下から抜けたい事を伝えに...いや、ファウストを殺す為に、奴がいる部屋のドアを開けた』




アンナ「あはははは!!」



ディーン「...!!!...なんだよ...これ...



アンナ「あぁーディーンー!ディーンだぁー、あはは」



ファウスト「お気に召したか?愛する人の無惨な姿は」



ディーン「...なんだよ...何してんだよ!!!」



ファウスト「見てみろディーン。この女は娼婦よりも下品でアバズレだ」





ディーンM『目の前に広がった光景は、服がズタズタになり、痣だらけになったアンナ。その周りには男が何人もいた。あろう事か、下着は付けていない。何が起きたのかは、アンナを見ればすぐ分かった。』






アンナ「あははー!たのしい!ディーンもまざる?」



ディーン「アンナに何したんだ!!お前!!」



ファウスト「嗅ぎ回っていた雌犬を捕まえただけだが?お前が離れたたった2時間でこうなるんだ、やはりクロコダイルは素晴らしい。」



ディーン「ふざけるな!!!」



ファウスト「どうだ?デイビス。自分が取り締まるべきクロコダイルに染められ、男達に嬲られる気分は!」



アンナ「うふふー...さいこー」



ファウスト「だそうだ。」



ディーン「お前だけは絶対に許さねぇ...!!



ファウスト「それはこちらの台詞だ。お前もじきに同じ目に遭ってもらおう。クロコダイルの試作に立ち会えるなんて幸せじゃないか、ディーン」



ディーン「...どうせ殺すなら教えろ。あの宿で何をするつもりだ」



ファウスト...クロコダイルは原材料がとても安価でねぇ。今まで前例のなかった大量生産を実行し、稼ぐ。それだけだ。コカインやマリファナじゃ満足出来ねぇ奴らはごまんといる。そいつらに夢を見せてやるのさ。」



ディーン「夢?地獄の間違いだろ!」



ファウスト「おっと。勘違いするなよ。ヤクに染った人間はみんなクソだ。それで金を稼ぐもちろん俺達も。マフィアはそれが当たり前だろう?今更ヒーローを気取るのか?」



ディーン「そんな話は誰もしてねぇ。お前らがやろうとしてるのはただのテロだ」



ファウスト「テロで結構。...おい、殺れ」



複数の銃声



ファウスト......!?」



ディーン「ボディーガードで俺を殺せると思ったのか?」



銃声



ディーン「殺しの場数は俺の方が上だ」



ファウスト...チッ!使えん奴らめ...!!



撃鉄の音



ディーン「遅せぇよ」



銃声



ファウスト「かはっ!!」



ディーン「頭か心臓撃ち抜きゃ早いんだがな、生憎俺は機嫌が悪い。」



銃声



ファウスト「ぐっ!!グハァッ!...分かった...金なら...いくらでもやる......殺さないでくれ...



ディーン「命乞いか。マフィアのボスが...情けねぇ」



銃声



ファウスト「ぁぁあああ!!?」



ディーン「そろそろ耳障りだ。死んどけ」



銃声




ディーン「...







アンナ「ディーン...



ディーン「ん!?アンナ!!!大丈夫か!!?」



アンナ「ディーン...



ディーン「悪かった...こんな事なら...傍にいれば良かった...!!!



アンナ「ディーン...お願い...私を殺して...!



ディーン「!?出来るわけがねぇだろ!何言ってんだ!!」



アンナ「アイツらに...クロコダイルを...飲まされたの...


ディーン「そんなの!!俺が今から病院に連れて行けば...!!



アンナ「無理よ...通常の数倍...摂取した...もの...!



ディーン ...!?嘘だろ...!?



アンナ「きっと...私はもう皮膚が溶けて...原型が亡くなっちゃう...だから」



ディーン「...出来ねぇよ......!!



アンナ「お願いよ...貴方に殺されるなら...!!!...幸せだから...



ディーン「...



アンナ「...貴方に...終わらせて欲しいの...




ディーンM『アンナは俺が握っていた銃を掴み、その銃口を自身の額に当てた。』




アンナ「...愛してるわ...



ディーン「...畜生...!!!




銃声



ディーン「アンナ...!!畜生...!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



情報屋「...砂吐きそうなぐらい甘々なロマンスが、いつの間にか血反吐吐きそうなぐらいの胸糞だ。」



ディーン「...もう昔の事さ」



情報屋「売春宿の爆破事件はウチの界隈じゃ有名だが...お前だったんだな」



ディーン「あぁ」



情報屋「どこまでも卑劣だあのファミリーは」



ディーン「それに、まだクロコダイルは無くなってねぇ」



情報屋「現実問題、クロコダイルをこの世から抹消するのは難しいぜ?」



ディーン「だが、過去の俺が許さねぇ。この世から消し去るまでは俺は死なねぇさ。」



情報屋「愛する女を殺した薬だもんな?いやあ、カッコイイねぇ!」



ディーン「思ってもねえ事言うな。それに、殺したのは...俺だ」



情報屋「...ふっ。」



ディーン「文句あんのか?」



情報屋「感情に揺れてるお前を見るとつくづく思うよ。」



ディーン「何がだ」



情報屋「エリックは、お前によく似てる」



ディーン「エリックがかぁ?」



情報屋「アイツは...まるで昔話のお前だ。ちと感情的過ぎるがな」



ディーン「ハッ。ろくな男になんねえぞ」




情報屋「いんや。いつか世界一ワルで世界一いい男になるさ。今のお前みたいにな。」



ディーン「やめろ気色悪い」



情報屋「過去もいいが、この先を楽しみに生きようぜ?ディーン。あー。ボトルが空じゃないか。次は何を飲む?」



ディーン「ハーパー...いや、ワイルドターキーで」



情報屋「別にいいが、I.W.ハーパーじゃなくていいのか?」



ディーン「昔を思い出しながらハーパーを味わって飲むのもいいが...俺にはやっぱりこっちが合うんだろうな。無性に飲みてぇ」



情報屋「...粋だねえ!」